僕もあと少しで就職、社会に出ないといけないわけで、結構不安なわけです。こういう時、新卒なら周りに同じような境遇の人たちがいて「怖いね」「うん怖いね」と不安を分かち合うこともできるのでしょうが、僕は残念ながら出来ません。
 なので、せめて本でもって、同じような気持ちの人がいるんだ、自分はこの空の下に1人じゃないんだと感じられれば、と思って読みました、ユゴーの「死刑囚最後の日」。題名どおり死刑囚の、主として最後の一日をディープに描いた作品です。ユゴーは死刑反対の立場でこれを書きました。
 冒頭から読み手の心をグッとつかみます。

 今は私は囚われの身である。私の体は監獄の中に鉄鎖に繋がれており、私の精神は一つの観念の中に監禁されている。恐ろしい、血なまぐさい、一徹な観念だ。私はもう一つの考えしか持たず、一つの確信しか持たず、一つの確実さしか持っていない、すなわち、死刑囚!

 この文章を読んだとき、青くさいと思われるかもしれないけど「この本は僕のことを書いてる」と思いました。それぐらい胸にグッときた。自分の感情がそこにあった。僕も同じだから。社会に出るっていうのは、ある意味死刑だから。
 最後は特赦を熱望しながら聞き入れられるわけもなく、残酷にもギロチンへと向かわされる寸前で記述は止まります。読み終わって、震えました。
 今僕は、確信をもっていうことが出来ます。死刑反対!死刑反対!死刑反対!死刑反対!就職反対!死刑反対!恐ろしいことです。



 で。まともに感想を書くと、それほどの本でもないと思った。あ、マジで?死刑囚ってこんなこと感じるんだ、なるほどね、と感じるところがあんまりなかったから。普通の人が想像しうる「死刑囚」の枠内というか。