面接の工場へ行った。かなり大きな工場。車道に面しているのだけど、シャッターはほとんど閉まっている。ほこりが飛ぶからだろう。僅かに空いたところからは、作業によって鉄から火花が飛び散っているのが見える。
脇道から事務所に入る。きらきらと光るものが漂っている。綺麗ェ・・・とは思わない。これは粉末状の金属だ。まずいところにきたと思った。肺が心配だ。
事務所に入る。どういう仕事をすると思っているのか?と聞かれたので、鋳物の余分な部分をヤスリで削る仕事でしょう、と手で擦るまねをした。それをみて面接の人が、どうやら勘違いをしているようだ、現場を見せましょう、と言うので、ついていった。
作っているものを見せられる。でかい。何に使うかは分からないが、かなり巨大な鉄で出来た製造中の物体がいくつかある。あれは10トン、あれは20トン、と説明してくれる。僕はてっきり、南部鉄瓶みたいな鍋なんかを、手でヤスリで削る仕事かと思ってた。なるほど、勘違いをしていたようだ。あと、作業場暗い。
さらに見せられる。面接の人が勘違いをしていると言っていたのは、僕が手でヤスリでする動作をしたからだろう。現場では持ち運びのできるサンダーで、でかい鉄の物体を削っていた。めちゃくちゃ火花が散っている。顔にも散っている。作業員の人が、サンダーを持たしてくれる。重い。これに振動が加わるとヤバイ。危険だ。
他にも、鉄を流し込むための型をとる作業も見せてくれた。製品の形をした発泡スチロールのまわりに、特殊な砂を詰めて型を取っていくのだが、そのための砂は上からドドドと落ちてくる。作業場は最終的には砂に埋まるように、地面に掘った穴にあるので、まるで墓穴で作業しているみたいだ。皆、防塵マスクをしている。マスクをしての作業は酸素が薄いので大変です、と面接の人が言っていた。
オッケイ。これだけ見れば分かる。ありがとうございました。完全に場違いだ。この仕事は誇張無しに寿命が縮む。さらに面接の人が言う。冬場は涼しくて作業条件がいいので、だいたい1日2時間の残業があります、ただ、その分の給料は出るので、一ヶ月で30万近くは稼げますよ(基本、8時半から5時までで日給1万円だから。それプラス、ってことで)。オーライ、バイトで30万近く稼げるなんて、引くわ。ごめんなさい、僕が間違ってました。さよなら!
ただ、なぜなんだろう、プライドのせいなんだろうか、「どう判断されるかは分かりませんが、やってみたいとは思っています」と言ってしまった。バカだ。まず採用されないとは思うが、もし電話かかって来たらどうしよう。逃げるしかないぜ。
でも本当は、ちょっとやってみたい。2ヶ月だし。いい社会勉強になるよ。ただ、肺が弱いから・・・。