ネットカフェより。

最近、初めて残業というものをした。忙しい。気づいたら忙しかった。「気づいたら忙しかった」と上司に言うと、言葉がおかしいといわれた。そうだろうか。気づいたら遭難していた、みたいな?でも実感としてそうだ。だらけきった精神は、忙しくなってから1週間ほどは忙しさを認識できなかったのだ。ド素人は、自分が遭難していることを自覚できず、だからこそ命にかかわるような深刻な遭難をしてしまうものなのだろう。
で、残業は続いている。昼休みを15分しかとれなかったり、この前は0時近くまで仕事をした。疲れた。帰り道「疲れた」と何度も呟いた。疲れはしたけど、なんとなく一人前の人間に近づいたような誇らしさも感じた。自分が成長したような気さえした。きっと明日の自分は今よりも気合が入った自分であり、理解力や記憶力がアップしているんじゃないだろうか。そんなことを思った。痛くなければ覚えませぬよ。
その次の日も仕事で、やっぱり朝早く起きなければいけなかった。起きて一言、「疲れた」と呟いた。起きようとしている自分のことが信じられないほど疲れていた。それでもなんとか顔を洗い、歯を磨いて部屋をでた。重たい脚を何とか動かして自転車をこいで職場に向かった。途中で反対方向へ自転車で行く人を見て「あれ?」と思った。あの人は同じ会社の人じゃなかったっけ?えーと、名前は知らないけどよく見かける・・・。そう思っていると、今度また向かいから自転車で来ている人を見て「あれれ?」と思った。やっぱり同じ会社の人なのだ。名前は知らないけど、よく見かける人だ。
それから会社への道中、何人も同じ会社の人を見かけた。みんな僕とは反対方向へ、会社から帰るかのように自転車をこいでいた。車に乗っている人も見かけた。会社に近づくにつれ、そのような人たちが増えていった。名前は知らないけど、確かに同じ会社の人たちだと感じさせる何かがあった。とても懐かしい感じがした。そうだ、これは休校の感じだ。そっくりだ。きっと今日は会社が休みに違いない。
もう会社は目の前にあった。かなり大きな建物なので、遠くからでも見えるのだ。目に映る会社はいかにも休校といった感じで、死んでいるように見えた。廃校のようだった。これはもう今日は、会社全体が休みなのに違いない。僕はそう断定すると、来た道を帰って部屋に戻った。
それから僕は、会社に行ってません。