心が躍る、ということが得意ではない。嬉しさよりも、フワフワしているのが怖いという感情が勝る。
心は地についていなければならない。隙間なく、水溜りのように、地に接していなければならない。
土と混ざりあって濁り、やがて染みこんでいく。誰の目にもとまらず、暗い地の底へと進む。
心が躍るのを受け入れられる人っていうのは、自分なりのはしごを持っているんだろう。浮遊感を楽しみながらも、糸の切れた風船のように漂ってるわけではなく、目指す所へ登って行ってるんだろう。
そんなふうになりたいものだ。ならないと、社会で生きていくのが難しい。
心が躍るといっても、小説やら映画なんかはまた別。小説や映画を手に取ると、僕は地下室に行ける。狭くて暗い地下室で、無限の飛翔感を楽しむのだ。